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ねことヘアピン

唯梓SS中心に自由気ままに綴るブログです。

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【はつちゅー!@後編1】

【はつちゅー!@後編1】




次の日の朝。


鏡に映っている自分は酷い顔をしていた。
目の周りが真っ赤になっていて、まぶたはパンパンに腫れ上がっている。
かみすぎて赤くなってしまった鼻は、まるでトナカイみたいだ。



(学校行きたくない…)



でも考えている事とは正反対に、私はパジャマを脱ぎ支度をし始める。
こんな顔でも『学校には行かなきゃ駄目』と私の脳は身体の神経に命令するのだ。



彼女が昨日帰り際に『また明日学校で』って言ってたのもあるけど、なにより…私が一日でも多く梓ちゃんに会いたいから。



休日に数日会えなかっただけでも彼女の事が恋しくて胸が苦しくなるのに、学校まで休んでしまったら自分で自分の首を絞める様なものだ。


私はいつの間にか重度な梓ちゃん中毒になってしまっていた。



(私だけがこんなに好きなのかな…)



こんなにも梓ちゃんの事を想っている自分に胸が切なくなり、私の眼にはまたジワッと涙が浮かんでくる。



(泣いちゃ駄目だよ唯。これ以上酷い顔にしてどうするの)



私は顔を天井に向け、クンッと息を吸い、眼から零れ落ちそうな涙を飲み込んだ。










こんな顔をしているせいか、学校に着くなり、クラスの皆にすごく心配をされてしまった。


まさか本当の事を話す訳にもいかないので、『どうしたの?』と聞かれたら『昨日泣ける映画見ちゃったんだ~』と嘘を付いて、私はいつもみたいにへらへらと笑って誤魔化した。


でもけいおん部のみんなは、私の嘘に薄々気付いているみたいだった。
有り難い事に深くは追求してこなかったけど。



そして授業も終わり、今は放課後。
他の皆は掃除当番らしいので、私は先に部室に行く事にする。


いつもなら待ちに待った部活の時間なのに、今日はなんだか気が重たい。



(…それも、この顔のせい…)



部室に向かう途中に私はトイレに入り、自分の顔を確認する。
私の顔は朝よりは大分マシになっていた。



(マシにはなったけど…うーん…これは気付くよなぁ…)



私はトイレを後にし、梓ちゃんに聞かれたらどう対処しようとか考えながら階段を上る。




(映画…たまねぎ…うーん………あっ)



色々考えながら階段を上っていたから気付かなかったが、既に私は音楽準備室のドアの前まで来ていた。

結局、考えがまとまる前に部室に着いてしまったみたいだ。




(あずにゃん…もう来てるかな…)




私はドアを見つめながら彼女の事を想像する。

梓ちゃんに会えると思うだけで、私の鼓動はドキドキと速まってきた。

私は不安半分、期待半分な気持ちで音楽室のドアを開ける。





―私の期待通り、既に梓ちゃんは来ていた。



「あ、唯先輩こんにち……どうしたんですか…その顔」



彼女はクルッと顔をこちらに向け、訪問者が私だと気付くと挨拶を掛けてくれたが、私の顔を見た途端に驚いた様に目を見開いてしまった。



「な、なんでもないよ~」



彼女にこんな酷い顔をあまり見られたくなくて、私はへらへらと笑いながら俯く。



何時まで見られてるかわからない私は、顔を上げる勇気がなくて地面とにらめっこをする。



すると、コトコトと小さな足音がこっちに近付いて来て、私が見つめている地面の中に梓ちゃんの上履きが入ってきた。




「何でもないって…あ、少し失礼します」




彼女は私にそう一声掛けると、手を伸ばしてまだ俯いている私の髪の毛に触れてきた。




―ドクンッ



髪を触れられた瞬間、私の心臓にドクンと熱い血液が流れ込む。




―ドクッドクッドクッ...



ドクドクと流れ込んでくる血液は、まるでどどまる事を知らないみたいだ。



私はうまく思考が回らない顔を上げ、梓ちゃんを見る。



彼女は私の髪を弄りながら、真剣な顔でジッと頭の一カ所を見つめていた。



たぷたぷに溢れるぐらい溜まってしまった心臓の血液が、次は全身に巡りわたり始める。



血液が全身に隈なく流れてくれたお陰で、身体がぽかぽかに温まり、指先がピクリと動いた。




(…キス…したい)



それをするのがさも当たり前かの様に、私の顔は梓ちゃんに引き寄せられていった。




(……………ッ!)




互いの顔が近付き、彼女の匂いをダイレクトに感じた私は途端に正気に戻る。


自分の浅はかな行動に驚きながらも、私は慌てて彼女の手をバッと振り払った。



「なかなかゴミが取れな……いたっ!…せ、せんぱい?」



「さ、触んないで…」



「え…?」



私は一歩離れて彼女から目を逸らす。


胸がズキズキと痛い。
きっと自分の気持ちに嘘を付いているから。
本当は、本当はもっと…もっと、彼女に触れてほしいと願っている。



でも…でも…―




「先輩…それってどういう意味ですか…?」




彼女の震える声に私は顔を合わせると、梓ちゃんは傷付いた顔をして私の事を見ていた。

こんな顔させたくないのに…。

私は彼女に返す言葉が見つからなくて黙ってしまう。



梓ちゃんは私の無視な反応に身体を震わせながら、途切れ途切れに声を出した。



「私の事…き、嫌いに…なったんです、か…っ?」




「違うよ!!!!」



私はまず自分自身の声の大きさに驚いた。
思いの外、大きい声を出してしまったみたいだ。
私の声の反響が部屋の中でキーンッ....と響く。



私は不安になりながらも彼女の目を見る。
私を見つめる梓ちゃんの瞳は、怯え揺れていた。



私が…彼女を怯えさせてしまったんだ…。



私は大きく息を吸いながら口を開いた。



「怒鳴ったりしてごめんね…違うの…私、あずにゃんが大好きだよ。
でも…私に近付くと危ないんだ。
今だって…あずにゃんに髪触られただけで、私、すごい意識してた。…また無理やりあずにゃんにキスしそうになったの…。
あずにゃんは…そういう事あまり望んでないみたいだし…その…昨日だって…。
私、もっともっとあずにゃんの色々な事知りたい…。でも嫌な事して嫌われたくないんだ…」



頭の中でゴチャゴチャになっていた想いを一気に口から吐き出す。

梓ちゃんの顔を見ようしたら、視界がぼやけていて見ることが出来ない。
急に目の奥がカァーッと熱くなる。
瞬きをすると、ジワリと目の端から涙が零れ落ちた。


私は泣いてしまっていた。



「唯先輩…」



涙は次から次へと溢れ出てくる。
私はそれを拭く事さえ出来なく、ただただ地面に小さな水溜りを作り続ける。


立ち尽くして泣いている私に、梓ちゃんはゆっくりと近付いて来た。



「先輩がこんなになるまで思い悩んでいたなんて…ごめんなさい…。この顔も、私のせいなんですよね…」



彼女はそう言うと小さな手を私の顔の前まで持ってきて、頬に流れ落ちている涙を指で拭き取ってくれた。
すると、さっきまで止まらなかった涙が不思議なぐらいピタリと止まった。


「私、怖かったんです。先輩と…その…キスしたら、先輩との今の関係が崩れてしまう様な…自分自身が変わってしまう気がして怖かったんです…。
何があったって唯先輩は唯先輩なのに…私が臆病なせいで先輩の事振り回して傷付けて…それにこの間はぶったりしてすみませんでした」



梓ちゃんは謝りながら私の頬を優しく撫でると、困った様に微笑んだ。



その愛苦しい彼女の笑顔に、私の心はギューッと鷲掴みされる。



「だ、だめだよ…あずにゃん離して…。私、またキスしたくなっちゃう…」



私は彼女の腕に手を添えて少し力を入れる。

彼女に触れられている頬、触れている手のひらが熱い。



「……いですよ」



彼女は私の頬から手を離さないまま何か呟いた。



「…え…?」




よく聞こえなかった私は聞き返す。




「だから…していいですよ、キス」




「…え…え…今、なんと…?」




彼女の魅惑的な言葉に私の頭は混乱する。




(キスしていい…キスしていい…キスしていいって…キスって何だっけ?)




「…キス、して下さい…唯先輩…」



梓ちゃんは呆けている私の頬を撫で、耳元で甘く囁いてきた。
何処かにトリップしていた私の意識が一気に戻ってくる。



「ほ、ほ、ほんとに…!?キスしてもいいの…!?」




「はい」




「ほんとのほんとに?」




「…はい」




「ほんとのほんとのほんとに?」




「ほんとのほんとのほんとにです!しつこいですよ」



私のあまりの執着さに、梓ちゃんはフーッ!と猫みたいに怒ってしまった。
でも頬はリンゴの様に赤く、とても可愛らしい。




「あ、あずにゃん…本当に後悔しない?…私、もうビンタは嫌だよぅ…」




私はいきなりのご褒美に、何か罠があるんじゃないかと考えてしまう。
あのビンタは結構心にも身体にもキタからなぁ…。



すると梓ちゃんは何か思い出したように喋りだした。



「あ…私、昔からびっくりすると、まず手が出ちゃうみたいなんです…。ごめんなさい、もうビンタはしませんから…」



彼女はそう私に謝ると、シュン...と小さくなってしまった。
口より先に手が出ちゃう癖は、直そうと思ってもすぐ直るものではない。



(でもそんな攻撃的な所も好きだったり…)




私は彼女に『これがええのんか~』と頬をペチペチされている自分を妄想していたら、梓ちゃんは続けて喋りだした。




「それに…わ、私も…唯先輩の事、ちゃんと、好きですから…もっと唯先輩の事知りたいんです…後悔なんて絶対しないです!」




そう言うと梓ちゃんは、真剣な瞳で私の事を真っ直ぐ見つめた。


私は口をぽかーんと開け彼女を見つめ返す。


あんぐりと開けた口からは「あ、あ、あ、」と声が漏れている。



「あ、あ、あ、あずにゃん!!」



私はあまりの嬉しさに、ガバッと彼女の身体に飛びついた。
そして背中に腕をまわして強くギュッと抱きしめる。


久しぶりに感じる彼女の心地良い体温、甘い匂い、柔らかい感触。
私の心が、身体が、彼女の全てで満たされていく。


梓ちゃんの背丈は私より少し低いから、顔が丁度私の胸に埋もれるような抱きしめ方になる。


そのため呼吸が上手くできないのか、梓ちゃんが「ぅぅ…」と苦しそうな呻き声を出した。


私は彼女の顔が見たくて、強く抱きしめている腕の力を少し緩める。


2人の間に少し空間が出来た事により、肩で呼吸をし始めた梓ちゃんの顔は耳まで真っ赤になっていた。



「あずにゃん…」



「…ゆい、せん、ぱい…」



途切れ途切れに私の名前を呼ぶ彼女の呼吸は乱れている。

彼女が息を吐くたびに、むあっと甘い匂いが鼻の中に入り、私の頭の中はくらくらしてきた。



(愛おしい)



私は気持ちを込めて彼女の瞳に熱い視線を送る。


すると私の想いが通じたのか、梓ちゃんは少し目を伏せて顎を上げて瞼を閉じた。


きつく目を閉じ、頬を赤らめながら私を待つ梓ちゃん。


私はそんな彼女の表情に惚れ惚れとしてしまう。


体中の神経を唇一点だけに集中させ、ゆっくりと彼女の顔に近付けていく。




―そして遂に、私達の唇と唇は合わさった。



「ちゅ…」



「んっ…」



(ん!?や、柔らか…!!)



あまりの唇の柔らかさに、私は思わず梓ちゃんから顔を離してしまった。


まだ唇には彼女の感触が残っている。


私がポケーっと余韻に浸っていると、彼女は目を開け、残念そうな顔をして私の事を上目遣いで見つめてきた。



「…もう…終わり…ですか?」



グサッっと彼女の言葉が私の心臓に突き刺さる。


私の理性は遥か遠くの方へ吹き飛んでしまった。



(そ、そんな顔されたら…私…)



も、もう我慢できない。



「お、終わりじゃ…ないよ…」




【はつちゅー! @後編2】へ続きます。

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